This paper was Proc. of the 1993 Autumn Conference of the Japan Society of Precision Engineering.
1993年度精密工学会秋季大会学術講演会論文集pp99-100より

マイクロマシンのための無線による制御・エネルギ供給に関する研究

○大岩 孝彰,吉田 文彦,久曽神 煌

 自走式マイクロマシンへのエネルギ供給を無線で行なうことを目的とし,電磁誘導と振幅変調によるエネルギと制御信号の送受を行なった.実験の結果390×390mmの移動範囲内で数十Vの電圧と20〜30mWの電力が得られた.そしてその電力を用いてバイモルフ型圧電アクチュエータを駆動することができた

はじめに

 自走式マイクロマシン実現のため,駆動用エネルギの供給方法および制御方法が重要な問題となっている.従来のマイクロマシンでは有線でエネルギを供給していた例が多いが,動作や行動半径に制限が生じる.そこで自走式マイクロマシンのためには無線によるエネルギ供給が望ましいと考えられる[1].これが実現すれば動力用エネルギの供給と同時に,制御用電源として内蔵した微小二次電池に電力を充電することも可能となる(図1).本報では電磁誘導によるエネルギ供給の可能性を検討するため,送受信システムを試作し,振幅変調を用いてエネルギの送受と制御用信号の送受を行なう.
理論・装置 無線によるエネルギの供給方法には,光[2],外部からの機械的共振[3],電磁誘導[4],マイクロ波を用いたもの[5]などがある.生体内での利用を前提にして安全性・透過性・無指向性等を考慮すると,電磁波,音波などの方式が考えられる.これらは波動による共振現象を利用するものであるが,液中での超音波によるものでは,キャビテーションの発生により効率が低下することが予備実験により確かめられたので,本報では電磁誘導を用いる.
 実験回路および装置の概略寸法を図2, 図3に示す.送信側はRLC直列回路で構成され,共振周波数は駆動用アンプの周波数特性を考慮して35k〜75kHzの範囲とした.アンプの出力電圧E0は52Vp-p,一次コイルは0.75mm2のビニル電線を□300mmの木枠に50回巻いたもの(L1=約2mH)である.コイルの端子間電圧E1は520Vp-pに達する.
 このコイルの中央に受信側の二次コイルを設置した.二次コイルは市販マイクロインダクタ(L2=1m〜5mH)を用いた.並列に接続したコンデンサC2により,送信側の共振周波数に同調させてある.ここで搬送周波数 f は次の式で表される.

mems_e0.gif

 得られた二次起電力は整流・平滑化してマイクロマシンに搭載する二次電池の充電に利用できる.また送信用信号を振幅変調し,受信側の復調回路により,制御用信号の送受を行なうことも可能である.
 ここで寸法次元解析により,将来微小化したときに電磁誘導で得られる電力の予想を行なう.振動数wで変化する磁界の中のコイルに流入するエネルギはwLに比例 [6]し,CとLは長さsのそれぞれ1乗および5乗に比例すると仮定すると

mems_e1.gif

となる.これは装置の寸法を1/10にすると得られる電力は1/100になることを示している.

実験結果

 まず図2(a)の回路において,得られた二次起電力を整流・平滑化したときの電圧E3と周波数fの関係を図4に示す.平滑のため,コンデンサの容量C3は0.1mFと大きい.負荷抵抗R2は100kWとした.二次電池の充電や制御回路の駆動に十分な電圧が得られていることがわかる.また,コイルに用いられているフェライトコアの寸法が同一であるため,各コイルでほぼ同程度の起電力が得られている.得られた電力はE32/R2で計算でき,各コイルで20〜30mWとなる.この時の一次側供給電力は約34Wであるので伝達効率は0.065〜0.09%程度となる.
 二次コイルの位置の影響を図5に示す.図の横軸は図3の一次コイル中心からの距離 x を表す.また図6はコイルの姿勢変化の影響を示す.横軸はコイル軸心の角度 alpha を表す.これらの図より一次コイル内部では磁界の強さは比較的安定していることがわかる.ただし二次コイルの軸心を一次コイルのそれと平行にしなくてはならない.
 次に一次側の駆動電圧を振幅変調し,任意の周波数の制御信号を伝達する実験を図2(b)の回路を用いて行なった.制御信号の周波数を0.65×1.6×13のバイモルフ型圧電アクチュエータ(850pF)の共振周波数約200Hzとしたとき,アクチュエータを約40 micro meterの振幅で共振させることができた.また共振周波数以下の任意の波形の電圧指令値でアクチュエータの駆動を行なうことができた.圧電素子駆動電圧を最大50Vとしたとき,変位は7 micrometer 程度であった.

まとめ

 自走式マイクロマシンのための電磁誘導によるエネルギ供給の可能性を検討した.その結果,圧電アクチュエータの駆動と内蔵小型二次電池の充電に必要な電力と電圧値を得ることができた.今後は小型化と高周波化を行なう予定である.本研究の一部は平成5年度科研費奨励研究Aにより行なった.

参考文献

1) 林 輝:微少走行機械,精密工学会誌,54, 9 (1988) 1646.
2) 佐井 行雄:光給電マイクロ・パワー計測システムの設計,トランジスタ技術,29, 4 (1992) 365.
3) 安田他3名:弾性体の共振を利用したマイクロロボットへの選択的エネルギ供給,第10回日本ロボット学会学術講演会,平成4年10月,1243.
4) 鳥井他2名:マイクロマシンへの電磁誘導を用いたエネルギ供給,平成3年電気学会全国大会,7 (1991) 192.
5) 松本 紘:マイクロ波エネルギ−伝送,日本航空宇宙学会誌,37, 422 (1989) 120.
6) 電気学会編:基礎電気機器学,オーム社,(1985) 39.